体調が悪い

 体調が悪い。だいたい常にそうなのにわざわざ体調が悪いと明言しているのは特段に体調が悪いからだ。

しかし体調の悪さに押しつぶされるように沈黙していると気が滅入る性分なので何か無理矢理にでも楽しいことを考えていこう。

 

 全身に切手を貼られたことであらゆる異国を(世界ではない。けして世界では!)を自由に行き来できるようになり、また行き来し続けなければならない呪いにかかって、いっそ呪いそのものになって、切手の翼で飛び回っている、そんな風景がどこにあるんだ。どこにもない。

 

 これは楽しいのか?もうだめだ。びっくりするくらい体調が悪い。

体調が悪いと「体調が悪い!」という身体のサインを受け取った脳がそのまま体調が悪いという諸事情を孕んだ言葉を分解することなく発話させようとするので、結果なにがなんなのか分からないままに、うわ言のように繰り返す、そう、なんだった、それだ、もう言わないぞ、悪くないんだ、体調がどうのこうのってやつを口にはすまい。

 

 口語の呪縛から抜け出せていないのだと言われる。そもそも文語を知らないし、口語すら、口語として知ったことはない。そういった知識が皆無なので、なるほど、それを呪縛だというなら、そうだろう。使いやすいものを使い続けるだけの、成長のない営み。どうにも抜け出せずにいる、というのは実感としては嘘で、事実かもしれないが、私が抜け出そうとしていず、抜けだすも何もどこに居るのかを分かっていないのだから、そういったことを問題にするような段階では全くない。そんな段階は来ないだろうとも思う。来るべきだろうか?私から向かうべきだろうか。どうとも思うことができない。ただ憎いだけだ。呪われていない人が。

 

 楽しくない。どうしたって何一つ楽しくはない。

楽しもうという行為が義務的になるのは楽しくないからか?

楽しくないと決めつけているからか?

 

 全身に切手を貼られて、旅に出て、旅先でまた切手を貼られ、旅を延長されて、それはずっと続く受け身の旅行だ、宛先を与えられて、辿り着いた先でまた切手を貼られる。

呪われていたい。どこかへ向かえと言ってくれ。ここへ来いと呼んでくれ。

体調が悪い上に切手も貼られちゃいないのは御免被る。