最近観た映画の感想

・「ゴッホ 最期の手紙」

 動く油絵のアニメーション映画。細かいことは公式サイトで。

ゴッホ~最期の手紙~

 これ映像表現が売りで内容はハートフルものだと思って観に行ったら結構はらはらしてスリルあって……びっくりした。てっきり美術モノだしアート系の映画であって娯楽性は薄いだろう、と思ってたんですよ。娯楽性の方向でしっかり面白かった。

 主人公の性格が頼もしいというか……アドベンチャーゲームめいた高揚感がある。

 

・「オール・アイズ・オン・ミー」

 ヒップホップMC、2PACの生涯を追う伝記映画。彼の幼少期から始まり、25歳で何者かに射殺されるまでの物語。

 チャラい!!トゥパックがチャラい!!硬派でダーティな曲の歌詞しか私が把握してなかったせいで私の中に合ったトゥパック像は「真面目で武闘派」なヒップホップの先鋒だったのが、実際の彼の売れ線だった曲をバンバン流す、実際に彼が調子のってる部分を描写していく、この映画によって「本当のトゥパックは常に真面目で良い子ぶってるわけじゃなくてスターダム駆け抜けるハッピーな青年の顔もあるよ」とイメージがガラッと変わった。良い意味で救いを感じる。

 

・「オリエント急行殺人事件

 古典なのに原作一度も読んだことなかったおかげで新鮮な気持ちで観れた。面白かったのでもっと早く原作読むか旧いほうの映画を観とけばよかった。

 

・「ブレードランナー2049」

 何も知らずに観ることが体験性の担保に大切な映画なのでネタバレを控える。とても良かった。

 

・「ベイビー・ドライバー

 鮮烈な演出~!(エドガー・ライト作品に対していつも同じことを言ってる気がする)

 青春~!

 語彙~!

 

・「ナミヤ雑貨店の奇蹟

  ダークホース。入りの長回しで商店街を抜けていくカットが良かった。ハートフルSFミステリ。

 

・「ガールズ&パンツァー最終章 第一話」

 ガルパンはキャラの特徴や仕草を説明せずに細かく描写するところが良い。実写映画で例えるなら整列するシーンの前にキャスト一人一人に個別の演技指導をして「画一的にならないように個別のダラけ感を出して」と釘差した後みたいな。立ち居振る舞いに抜け感がある。

 

・「祈りの幕が下りる時

 新参者シリーズ最終章。原作読んだとき気にならなかったのに映画で観ると「あの人とばっちりで死んでない?」みたいなのが際立つのはなぜ。

 

・「キングスマン ゴールデンサークル」

 アルファジェルによる蘇生って聖杯的なモチーフでもあるのかなと思った。正しき選択をしたものが真に蘇生後の生に辿り着き、誤ったものは死ぬ=聖杯による蘇生が叶わなくなる、という。キングスマンのコードネームが円卓の騎士だし。

 前作の教会でのアクションシーンも、今作の最後のアクションシーンもそうなんだけど、キングスマンシリーズは「作中最もホットなアクションが、倫理的/心情的なブレーキで観客が完全にノることができない」構造をわざと作り出してる。痛快なアクションじゃなくて、悲しみや憂いや恐怖を帯びたアクションになっている。そこが良いところだと私は思う。暴力的、過激なようでいて、その表現への抵抗や嫌悪を抱いてもらうことを大事にしている。

 

・「バーフバリ 王の凱旋」

 面白かった。前評判が良過ぎたので過度な期待をして劇場へ足を運んだせいか、「普通の映画じゃん」と鑑賞中に思ってしまったが、冷静になってみると普通ではない。王道ではある。王の映画だし。

 冒険活劇、英雄譚、青春、戦争、アクション、歌、踊り、と色々なものをギュッと詰め込んだお得パックみたいになってて、そのお得感が前作を超えている。足りないのはスリル、感情の機微、苦しみや痛みなど。なんというか全体的にマイルドかつスムーズで、ぎこちない部分が全然ない。エンドロールも1秒しかない。エンドロールが1秒しかない映画ってすごいな。

 

・「勝手にふるえてろ

 痛快コメディ、として銘打たれてるし、前半は確かにそうなんですよ。笑いそうになる表現が次々にやってくる。それが途中で豹変して映画の様相が変わる。

 映画「フェーム」での現実の延長線上のミュージカルというものがあって。何かというと、それは現実の路上で、本当に、急に音楽かけてダンスを始めてミュージカルをやってしまう、というもので、当然ながら渋滞を巻き起こしてしまって人から怒られて乱闘騒ぎになったりして幕を閉じる、というものなんです。現実の生活の中で本当に踊り出してしまう、現実がそれを邪魔扱いして退けていく。"現実を現実が剥がしていく"。そういう描写だからこそ、「フェーム」の登場人物たちのフラストレーションの解放と、また解放しきれない青春の葛藤をにじませるものになっている。

 これ最近ある映画でオマージュされたんですよね。「ラ・ラ・ランド」です。ララランドの場合は、現実の路上ではなくて、主人公の空想上でのミュージカルであるために、誰からもそれを邪魔扱いされることはないし、いってしまえば”現実が虚構を剥がさない”。はなから、作中世界での整合性を取る必要が無い設定で虚構のミュージカルをやっている。

 で、「勝手にふるえてろ」の話に戻ります。この作品だと、"虚構で虚構を剥がしてく"んですよ。これがすごい。虚構は虚構であって現実ではなかったことを表現するために、虚構を用いてくる。現実の風景の中に"浮いた"、"痛い"主人公が歩いていって、浮いたまま種明かしをしてくる。演出バリバリすごかったんですよ。マジですごかった。制作班はこれ新規に独創的に思いついたんだろうか。それとも何かしらの作品からのインスピレーションを受けて作ったんだろうか。気になって仕方ない。とても面白かった。

 

 

最後に架空の映画のトレーラーを見つけたので紹介します。これ好き。

www.youtube.com