この回線の向こうに誰がいようと
間違い電話が掛かってくる。二ヶ月ほど前からだ。
ナントカ住宅というところから、Yさんのお宅ですか、水漏れの件ですが、という要件で、何度も何度もかかってくる。
その都度「私はYさんではないですしナントカ住宅さんは存じ上げませんよ。番号が間違っているのでよくお確かめください」と言っているのだが、ほぼ毎日同じ内容で掛かってくる。
私のPHSの留守録のメッセージは3件までしか保存できないので、このナントカ住宅さんが間違い電話の留守録を吹き込みまくってくるために、他の用件で掛けてきた人の留守録が次々と消去されてしまう。ジョジョ6部にそんな攻撃をしてくるスタンドが居たけど、まさにあんな感じだ。迷惑すぎる。
今日も間違い電話が来た。今日だけで二回目のやつが来た。
「水漏れの件ですが」
「先程も申し上げましたが間違い電話ですよ。私はYさんじゃありません。Yさんが番号を書き間違えたのではないでしょうか」
「あー、そちらの番号は×××××でお間違いないでしょうか」
「確かにその番号です」
「Yさんではない?」
「ちがいます。しっかりと確認してください。この番号は間違っています」
「あー」
電話は唐突に切れた。すみませんの一言も言わないで切れた。なんなんだ。
いい加減に嫌気が差したので着信拒否に設定し、これでもう煩わされることはないだろう、と安心していた矢先、また着信が入った。
見ると違う番号だ。ただ、市外局番が先ほどのと同じなので、嫌な予感がし、応答すると、
「○○住宅です。Yさんのお宅でしょうか?水漏れの件ですが」
怖くなって電話を切り、その番号も着信拒否に設定した。
もういやだ。わけがわからない。
その後に、また違う番号から着信が来た。市外局番は同じだった。留守録が吹き込まれる。もう再生するのは嫌だった。
しかし留守録のメッセージを消去するためには一度は再生しないといけないのだ。電話を耳に当てることなくメッセージを再生する。しばらく待つ。そろそろ再生は終わっただろうか?消去するためのボタンを押す。画面を確認するとメッセージは消去できていた。安堵して、その番号も着信拒否に設定した。
今のところ着信は無い。ただもうひたすらに怖い。